写研書体はなぜガタるか?
写研の写植書体には基になる文字、つまり字母(1932年から開発)があります。デジタルフォントなど無かった時代でしたから、この字母そのものを文字盤の文字にするために手で大きく書きました。それを縮小して写植用の文字を作ったのです。ですから写植文字を拡大すると、どうしてもぼやけます。文字盤の文字は約16級=4ミリでできておりますから、ぼやけずに使用できるのは、その約6倍の100級=25ミリ位です。電算化されたフォントの、もともとの字母も同じ物と思います。
この字母を基に作られたのが写研のマサラという切り文字の機械です。大きくするとぼやける字母を、むりやりデジタル化してCDに納めました。このCDから拾った文字を切り文字として使いだしたのが、22年前の1986年頃です。「さわいフォティック」では、この年にこの機械を導入致しました。東京都では1号機でした。字母が字母ですから、100ミリ位で切りますと、ガタが出ます。500ミリ〜800ミリで出力しますと、もうガタガタです。ですから、大きい文字には向きません。そういう、大きくするとぼやける字母で出来た写研の写植書体を普通にアウトライン化しますと、輪郭の荒れ模様がもろに出てしまって、大きい文字にはとても向きません。曲線でできていないのです。
むかしむかしのことですが、20年ほど前に印刷・切り文字の展示会が東京の晴海で行われていた時のことです。写研は「マサラ」で「ナールE」を約800mmHで切り文字の出力サンプルを切ってデモをしていました。そのデモサンプルを見た切り文字の手切りの専門家が一言「なんだこれ、アールがガタガタじゃないか、手切りのほうがよっぽど綺麗だ、これじゃ製品にならない」と云ったのです。それ以来「写研」は切り文字のデモの場合は100mm以下でしか出力しなくなったと記憶しています。その数年後、写研は「切り文字の機械のマサラ」を販売中止にしてしまいました。こんないきさつを目撃したのは、私を含めもう何人もいないと思います。
話を戻しましょう。2008年にも入った現在は、オープンタイプフォント(OTF)が常識ですから、いまだにアナログ(手書き)のようなドットフォントもどきの方式で文字を出力しているのは写研書体くらいなものでしょう。写研書体をそのまま忠実にアウトライン化する手法もございますが、古い字母の輪郭の模様はそのまま残りますから、ガタになります。通常の写研書体にガタが出るのはこの理由からです。(アウトライン化サービス会社に散見されます)。もともと、写研書体は100mm以上の大きさで出力するようには設計されておりませんから。
なお、各種字母は、途中で新しく書き直して(19701980年頃?)精度をあげております。中には、古い字母のままの書体もあるようです。この字母の善し悪しは、切り文字にしてみますと良くわかります。たとえば、英文のフーツラ系は、今でも精度がよくありませんから、古い字母のままかも知れません。(推測です)。
余談ですが、写研書体を全て
OTFにするのには時間もかかりましょう。また仮にできたとしても、一書体あたり、20万円〜30万円するのではないでしょうか(5書体パックで80万円〜100万円位?)。当社の切り文字用マシーンの「マサラ」の書体が、ゴナ系で一書体(1枚のCD)33万円でしたから。今ここにご紹介している書体が欧文を含めてCDで18枚あります。全部でいくらになりましょうか。お暇な方は計算してみて下さい。(33万円×18枚)。当社はこの金額を著作権として「株式会社写研」に支払っております。

(記=澤井明)。2007.11.24  2008.1.1 追記  2008.4.7.追記々々。



さわいフォティックの研書体アウトライン化の精度

  1. 無修正ですが、切り文字で大きく作成した字母をスキャニング+トレースしますので、精度は非常に高いものができます。200mm以下の印刷物でしたらそのまま使用可能です。気になる方はご自身で修整して下さい。
  2. 切り文字にする場合、199mm以下ならそのまま使えると思います。200mm以上では修整が必要になります。当社で作成した字母とスキャニングとトレースの精度が高いので、ゴナ系でもナール系でも修整にはそれ程時間はかからないと思います。
    (スムージング、直線化・曲線化・角丸化・自由曲線化・直角化=「プラグインソフト必要」でほとんど対処できます)。

  3. 200mm未満でしたら修整の必要はないと思いますが、気になる方には、当社でも修整します。修整代が必要になります。


    2008.4.6. 書き換え 責任者=澤井明